妙法院(みょうほういん)は、東山七条付近にある寺院
天台宗三門跡の一つ
伽藍は、西側を正面とし、東大路通りに面して唐門と通用門が建っている
庫裏1棟が国宝に、大書院・玄関の2棟が重要文化財に指定されている
<庫裏(くり)(国宝)>
庫裏は寺院の台所兼事務所の役割を果たす建物で、豊臣秀吉が行った千僧供養に集まった千人もの僧の食事を準備した台所
大棟上のほか、左側屋根上にも小棟を出して煙出しが設けられている
内部は、前方の土間、後方の板間、奥の左右の座敷の3部分に分かれ、
土間と板間部分は天井板を張らず貫や梁などの構造材をそのまま見せた豪快な造りになっている
近世の庫裏は、居住機能も持つが、妙法院の庫裏は、調采喫飯(ちょうさいきっぱん)の場として限定されている
入母屋造の屋根は庫裏は珍しいもの
桃山時代の豪華な建物の遺構
桁行21.8m、梁間23.7m、一重、入母屋造、妻入、玄関一間、唐破風造、本瓦葺、北面庇を含む
大棟上には煙出しの小屋根をのせている
1595年(皇紀2255)文禄4年の建立といわれる
大棟上にある鬼瓦には慶長九年(1604年(皇紀2264)慶長9年)の箆書がある
1914年(皇紀2574)大正3年4月17日 重要文化財に指定される
1957年(皇紀2617)昭和32年6月18日 国宝に指定される
<大書院(おおしょいん)(重要文化財)>
1619年(皇紀2279)元和5年
東福門院入内のときに建築された女院御所の旧殿を移築したものといわれる
狩野派の筆による大画面の豪華絢爛な「唐美人図」「四季花鳥図」などの金障壁画がある
桃山時代の豪華な建物の遺構
桁行五間、梁間六間、一重、入母屋造、こけら葺
1914年(皇紀2574)大正3年4月17日 重要文化財に指定される
<玄関(げんかん)(重要文化財)>
桁行七間、梁間四間、一重、入母屋造、こけら葺
1619年(皇紀2279)元和5年の建立
1914年(皇紀2574)大正3年4月17日 重要文化財に指定される
<積翠園>
かつては妙法院の境内だった、北側の東山武田病院にある池泉回遊式庭園
平家物語にも記されている平安時代末期の平重盛の邸宅「小松殿の園地」といわれる貴重な名庭
国宝に5件(仏像4躯・古文書1件)が、その他11件が重要文化財に指定されている
古文書
<羊皮紙 ポルトガル国印度副王信書(こくいんどふくおうしんしょ)1通(国宝)>
1588年(皇紀2248)天正16年4月
ポルトガル領だったインド半島西岸のゴアの副王から
豊臣秀吉に宛てのキリスト教弾圧政策の緩和を求めた羊皮紙の書簡
豊臣秀吉を祀る豊国廟が取り壊されたときに、妙法院に移管された品の一つ
1955年(皇紀2615)昭和30年6月22日 国宝に指定される
<紙本墨書 後小松天皇宸翰御消息(しんかんごしょうそく)1幅(重要文化財)>
1420年(皇紀2080)応永27年6月3日
後小松天皇の自筆の手紙
1916年(皇紀2576)大正5年5月24日 重要文化財に指定される
<堂供養記(どうくようき)(春記・大記)2巻(重要文化財)>
鎌倉時代のもの
1955年(皇紀2615)昭和30年6月22日 重要文化財に指定される
<妙法院文書 729通(重要文化財)>
42巻・21冊・2帖・14幅・431通・27枚・2双・1包
平安時代から江戸時代に妙法院に残された文書のまとまり
2017年(皇紀2677)平成29年9月15日 重要文化財に指定される
仏像・彫刻
<木造 千手観音立像 1001躯(国宝)>
三十三間堂の本堂に安置されている
1935年(皇紀2595)昭和10年4月30日 重要文化財に指定される
2018年(皇紀2678)平成30年10月31日 国宝に指定される
<木造 普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきぞうぞう)1躯(重要文化財)>
本堂(普賢堂)の本尊
六牙の白象の背に坐って合掌する普賢菩薩/A>
平安時代末期の作
1998年(皇紀2658)平成10年6月30日 重要文化財に指定される
<木造 不動明王立像(ふどうみょうおうりゅうぞう)1躯(重要文化財)>
護摩堂の本尊の不動明王
平安時代前期の作
ヒノキ材と思われる針葉樹材の一木造、彫眼
奈良国立博物館に寄託されている
1999年(皇紀2659)平成11年6月7日 重要文化財に指定される
障壁画・襖絵・絵画
<絹本著色 後白河法皇御像(ごしらかわほうおうみぞう)1幅(重要文化財)>
鎌倉時代の作
1905年(皇紀2565)明治38年4月4日 重要文化財に指定される
<妙法院障壁画 58面(重要文化財)>
桃山時代の作
玄関、大書院一之間・二之間は、大画面の豪華絢爛な金障壁画で飾られている
玄関は、金地に豪華な松を描いた雄大な構図法がとられている
狩野派の作といわれる
大書院一之間は、唐人物等、二之間は柳桜草花を金地に描いたもの
狩野光信など狩野派の作といわれる
・玄関 紙本金地著色松図(壁貼付4面、襖貼付8面、戸襖貼付8面)
・大書院一之間 紙本金地著色唐人物図(床貼付3面、違棚貼付3面、襖貼付2面)
・大書院一之間 紙本金地著色果子図(違棚天袋貼付2面)
・大書院一之間 紙本金地著色群仙図(張台構貼付4面)
・大書院一之間 紙本金地著色唐美人図(襖貼付4面)
・大書院一之間 紙本金地著色草花図(附書院壁貼付2面、同障子腰貼付4面)
・大書院二之間 紙本金地著色柳桜草花図(襖貼付14面)
1978年(皇紀2638)昭和53年6月15日 重要文化財に指定される
附指定:大書院裏一之間・裏二之間 紙本著色秋草図(襖貼付14面)
(桃山時代末期の狩野派の作)
附指定:玄関 紙本金地著色唐子遊図衝立 1基
(桃山時代の狩野派の作)
附指定:玄関 紙本金地著色松図(壁貼付4面、襖貼付8面、戸襖貼付8面)
附指定:大書院一之間 紙本金地著色唐人物図(床貼付3面、違棚貼付3面、襖貼付2面)
附指定:大書院一之間 紙本金地著色果子図(違棚天袋貼付2面)
附指定:大書院一之間 紙本金地著色群仙図(張台構貼付4面)
附指定:大書院一之間 紙本金地著色唐美人図(襖貼付4面)
附指定:大書院一之間 紙本金地著色草花図(附書院壁貼付2面、障子腰貼付4面)
附指定:大書院二之間 紙本金地著色柳桜草花図(襖貼付14面)
<紙本墨画淡彩 山水図 10面(京都市指定有形文化財)>
白書院の襖6面・違棚壁貼付4面
寛政年間(1789年〜1801年)後期
呉春の四条派時代の作
工芸品
<秋草蒔絵文台(あきくさまきえぶんだい)1基(重要文化財)>
桃山時代の作
甲板の全面に、あでやかに咲く秋草文が蒔絵されている
金銀切金(きりがね)が施され、側面・脚には菊・桐紋を平蒔し針描が施されている
豊臣秀吉の遺愛の品で、豊国廟が取り壊されたときに、妙法院に移管された品の一つ
1972年(皇紀2632)昭和47年5月30日 重要文化財に指定される
<明官服類(みんかんぷくるい)一括(重要文化財)>
中国 明時代のもの
1596年(皇紀2256)文禄5年9月
文禄の役の後の日明講和のときに、大坂城にて明国の使者より豊臣秀吉が賜った冠服類と、
同時期に贈られたといわれる服飾類
羅や紗、緞子(どんす)、金襴や絽などを用いて、製作当初の仕立てがそのまま残されている
京都国立博物館に寄託されている
2008年(皇紀2668)平成20年7月10日 重要文化財に指定される
書跡・典籍
<紙本墨書 山家心中集(さんかしんちゅうしゅう)1帖(重要文化財)>
歌僧 西行の晩年の歌集の一つ
花・月・恋・雑からなり、西行自詠歌360首など、計374首が収められている
鎌倉時代中期の綴葉装冊子本
縦16.1cm X 横16.1cm
末尾には藤原俊成との贈答歌がある
巻末に、自跋(じばつ)(西行が自ら記した解説や後記)がある
平安時代末期の1175年(皇紀1835)承安5年頃に成立したものといわれる
2015年(皇紀2675)平成27年9月4日 重要文化財に指定される
<内証仏法相承血脈譜(ないしょうぶっぽうしょうしょうけちみゃくふ)1巻(重要文化財)>
平安時代の作
1955年(皇紀2615)昭和30年6月22日 重要文化財に指定される