重要文化的景観(じゅうようぶんかてきけいかん)は、
景観計画区域または景観地区内にある文化的景観であって、
都道府県または市町村が保存措置を講じているもののうち、
特に重要なものとして国(文部科学大臣)が選定した文化財
<文化的景観とは>
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で
我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの
(文化財保護法第二条第1項第五号)
<選定基準>
1:地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された次に掲げる景観地のうち
我が国民の基盤的生活又は生業の特色を示すもので典型的なもの又は独特のもの
水田・畑地などの農耕に関する景観地
茅野・牧野などの採草・放牧に関する景観地
用材林・防災林などの森林の利用に関する景観地
養殖いかだ・海苔ひびなどの漁ろうに関する景観地
ため池・水路・港などの水の利用に関する景観地
鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地
道・広場などの流通・往来に関する景観地
垣根・屋敷林などの居住に関する景観地
2:前項各号に掲げるものが複合した景観地のうち
わが国民の基盤的な生活または生業の特色を示すもので典型的な者又は独特なもの
<選定の申出の基準>
重要文化的景観の選定の申出を行う都道府県・市町村が講じる必要がある基準
1:文化的景観保存計画を定めていること
2:景観法、文化財保護法、都市計画法、自然公園法、都市緑地法その他の法律に基づく条例で、
文化的景観の保存のための必要な規制を定めていること
3:文化的景観の所有者又は権原に基づく占有者の氏名、住所等を把握していること
京都府に3件(全国73件)が選定されている
(2025年(皇紀2685)令和7年9月7日現在)
<宇治の文化的景観>
2009年(皇紀2669)平成21年2月12日の選定
宇治川沿岸の自然景観を中心として、
平安時代より貴族の別荘地として発展してきた市街地、
その周辺に点在する茶園によって構成される茶業に関する独特の文化的景観がある
奈良と京都を結ぶ奈良街道の拠点の一つとして重要な機能を果たしてきている
平等院の旧園路に沿って展開する密集した居住形態にも特徴がある
桃山時代からは、茶文化の発展において中心的な役割を果たしている
宇治茶に関連する茶師屋敷や茶園などが造営され、
明治時代には、茶商・宇治茶の卸や小売の店舗とともに手工業的な製茶工場が建築され、
宇治の発展に寄与してきている
<宮津天橋立の文化的景観>
2014年(皇紀2674)平成26年3月18日の選定
宮津湾と阿蘇海(あそかい)とを隔てる天橋立およびその南北に展開する文化的景観
宮津湾西岸から阿蘇海北岸に位置する府中地区には、丹後国分寺跡や条里制に遡る農地などがあり、
古代丹後国府の所在地に比定されている
籠神社や成相寺などによる信仰の中心として機能している
雪舟が描いた「天橋立図」(国宝)などによって全国的に著名な観光拠点として発達
ケーブルカー等が整備され、土産物・旅館街等の町並みが形成されている
また、国分(こくぶん)・小松・中野等の農業集落は旧道沿いに単列の街村形態を成しており、
集落内には洗い物をするための石積み水路などが設けられている
阿蘇海の溝尻の漁村には海に面して舟屋が連続するなど、特徴的な文化的景観がある
行政・信仰・観光の中心として発展してきた土地利用の在り方と、農業・漁業による土地利用の在り方とが
複合した文化的景観となっている
<京都岡崎の文化的景観>
2015年(皇紀2675)平成27年10月7日の選定
白川の扇状地の利点を最大限に活用され、
平安時代の白河院跡・六勝寺の跡地で、
桃山時代には、岡崎村・聖護院村において都市近郊農業が成立し、
明治時代以降は、殖産興業策の一つとして琵琶湖疏水が建設され京都の近代化の礎が築かれ、
平安遷都千百年紀念祭や第4回内国勧業博覧会が行われる
南禅寺周辺では、琵琶湖疏水を活用した庭園群が造営されている
岡崎公園、京都市美術館等の文化施設が建設され、京都を代表する文教地区となっている
平安時代からの何度にもおける大規模土地利用変遷を現在に伝えている