西陣織(にしじんおり)は、平安時代から発展してきた機織産業(はたおりさんぎょう)
先に糸染めした糸を使い紋様を織り出す高級先染紋織物
西陣で織れないものはないといわれるほどの高度な織り技術を持っている
12品目の織り技法が伝統工芸品の指定を受けている
綴織・経錦織・緯錦織・緞子織・朱珍織・紹巴織
風通織・捩り織・本しぼ織・ビロード織・絣織・紬織
<綴織(つづれおり)>
西陣織は、色糸を用いて文様を表す
紋織機(ジャガード機)を用いる技法と、
綴織は、綴機(つづれはた)を用いて、文様のところだけ配色を違えた横糸をはめ込むようにして織る技法
ピンと張られた、縦糸を交互に上下させて、その隙間(杼口)に小さな杼を通して文様のところだけ色横糸を通す
縦糸が細く、太い横糸を包み込むように織っていく
西陣で織れないものはないといわれる
能装束・横綱の化粧まわし
ネクタイ・ショール・和装小物などの材料用
壁掛・インテリアなどの材料用
南座など全国の大劇場の緞帳
「西陣」とは、応仁の乱で、山名宗全らの西軍が、本陣を置いたことから名前が付けられた
京都市の市街地の北西部の上京区・北区あたり
北は上賀茂、南は丸太町通、東は烏丸通、西は西大路通に囲まれたあたり
(現在、「西陣」という行政上の町名はない)
<図案>
伝統的なデザインを参考にして、製作する絵柄を描いていく
<紋意匠図(もんいしょうず)>
織物設計図(方眼紙)に図案を拡大して写しとり、どのように織り上げるかを方眼紙に色分けしていく
最も大切な工程の一つ
<紋彫(もんほり)>
紋意匠図に基づいて、縦33cm、横4.5cmほどの短冊型の紋紙(もんがみ)に、ピアノ式紋彫機を使って、
経糸(たていと)の上げ下げを指令する穴をあける
現在は、コンピュータグラフィックスにより製紋されている
<撚糸(ねんし)>
繭(まゆ)から取り出された糸をとり出して、数十本を合わせ、織物の風合いを出すために撚りをかけて生糸を製生する
絹織物独特の光沢は、元となる原糸の光沢からくるといわれる
<絣(かすり)>
西陣絣のために、大枠という四角形の枠に糸の束をピンと張り、デザイン図をもとに、糸を染色しない部分を決め
防染のため、綿糸や耐水性のある紙などをしっかりと巻き付ける
<糸染(いとそめ)>
織る前に、生糸を染める、先染である西陣織の特徴的な工程
織元の指定どおりに絹糸を染め上げ、微妙な色の調整が行われる
<糸繰(いとくり)>
カセの状態になっている染色された糸を、整経や緯巻の工程で扱いやすいように、糸枠に巻き取る
<整経(せいけい)>
3千本から8千本ほど使われる経糸(たて糸)を、必要な長さと本数の準備をする
<緯巻(ぬきまき)>
緯糸(よこ糸)を準備する
<綜洸(そうこう)>
織物の文様に合わせて、経糸(たて糸)を引き上げ、整経した緯糸(よこ糸)が通る杼道をつくる
優れた綜絖は、厚物から薄物まで幾種類もの織物をつくることができる
経糸(たて糸)は、紋紙による設計通りに上下する
<配色(はいしょく)>
千色以上の色糸が常備してある糸棚から絵緯糸を選び出し、織り上がりを想定しながら織物設計図上に配置し、
配色指示書を書きあげる
<製織(せいしょく)>
織物設計図と配色指示書に沿って織り上げていく
織機は、大きく手機と力織機(りきしょっき)に分けられる
<綴機(つづればた)>
ジャカードの作用によらず、独特の爪掻きで文様を表現していく
歴史のある手法の一つ
<手機(てばた)>
金襴や丸帯などの高級品の複雑な紋様で、力織機では織ることができないものを、手機で織る
独特の風合いをもつ
<力織機(りきしょっき)>
力織機の活用や、紋紙からデジタルデータによる経糸(たて糸)の上下など、伝統技術に、科学の進歩を導入している
<ビロードの線切り>
ビロードは、経糸(たて糸)を二重にして、一定の間隔で針金を織り込む
織り上がった後、針金の上の経糸を切ると経糸が毛羽立ち、線切りビロードとなる
<箔切り(はくきり)>
少しでも軽くするため、織物の裏にある不要な糸や箔を全て手作業で切り整えられる
<整理加工(せいりかこう)>
蒸気の中を通して、独特の風合いを出される
<和宮の歌>
「空蝉の 唐織ごろも なにかせむ 綾も錦も 君ありてこそ」
14代将軍 徳川家茂が、京都上洛が決まり、正室 和宮は、お土産として西陣織をねだる
しかし、徳川家茂は大阪城で亡くなり、和宮には西陣織だけが届き、悲しみつつ歌を詠んだといわれる
<養蚕農家>
京都府内の養蚕農家は、福知山市に数戸残っているだけ
桑(くわ)の葉だけを食べさせる、伝統的な飼育法で上質の繭が生産されている
生産量は、年間約260kg
西陣の織道楽塩野屋(上京区千本通一条下ル)では、京都府内生産の繭100%の絹製品の製作を手がけている
<今宮神社の織姫神社>
西陣織業者により祀られている
<建勲神社境内社 義照稲荷神社>
古くより秦氏の守護神であり、西陣織の祖神とされる
応仁の乱では、西軍の陣が張られたところ
<東海道中膝栗毛>
「東海道中膝栗毛」には
「商人のよき衣きたるは他国と異にして、京の着だをれの名はますます西陣の織元よりいで、
染いろの花やぎたるは堀川の水に清く」と記されている
西陣織が全国的に知られ、「京の着倒れ(きょうのきだおれ)」という言葉があったことが分かる
<京都市考古資料館(旧西陣織物館)(京都市登録有形文化財)>
京都市上京区今出川通大宮東入元伊佐町
西陣織を陳列することを目的としていた
現在は考古資料の公開展示施設
1914年(皇紀2574)大正3年
本野精吾の設計、清水組の施工により建築された近代主義建築の先駆的建物
<西陣織会館>
京都市上京区堀川通今出川下ル竪門前町
西陣織の総合的なPR館
古い織物や機業の歴史資料展示、職人による実演やきものショーなどが行われている
<西陣織工芸美術館「松翠閣(しょうすいかく)」>
京都市上京区寺之内通智恵光院東入北側
西陣で織れないものはないといわれるほどの高度な織り技術を駆使して、
尾形光琳・円山応挙・葛飾北斎・琳派・ゴッホ・ミレー・ルノワールなどの作品を屏風・衝立・几帳などに精緻に織り上げ復元している
<西陣織あさぎ美術館>
日本が世界に誇る西陣織の素晴らしさ、美しさを発信すべく西陣織に特化した美術館
日本画、印象派の作品などの名画が西陣織で表現されている
<川島織物文化館>
左京区静市市原町
染織品約8万点、内外の古書約2万点、創業以来製作してきた試織裂、原画類が約6万点、合計16万点が収蔵されている
1889年(皇紀2549)明治22年
二代目川島甚兵衛が、三条高倉に建てた三階建ての洋館「織物参考館」が起源
国内最古の企業博物館とされる