梅(うめ)は、バラ科サクラ属の落葉高木で、観賞用の樹木と食用の果実がなる樹木がある
開花は、1月から3月で、白、淡紅、紅色などの花をつける
奈良時代に編集された万葉集には、梅の花を詠んだ歌が100首以上ある
梅の実は、1から3cmのほぼ球形の果実をつけ、5月下旬~6月に収穫時期となる
京都には、観光となる梅の名所や、実がなる梅の名所も、どちらの名所も多くある
京都には、多くの梅林があり、観梅は、2月上旬から3月中旬がシーズン
12月末から咲き始める早咲きの梅も楽しめる
原産地は中国で、飛鳥時代の遣唐使により持ち込まれたといわれる
栽培品種は300ほどあるといわれる
北野天満宮の祭神 菅原道真が梅をとても愛でていたことから、
全国のほとんどの天満宮・天神さんには梅の木が植栽されている
<青谷梅林(城陽市中中山)>
約50軒の農家の生産梅林 約20万m2 約1万本の梅
<梅宮大社(右京区)>
西神苑に、約35種550本ほどの紅白の花に彩られる梅林がある
祭神である木花咲耶姫命の「木花」が「梅」の古称といわれ、梅の花が梅宮の神花になっている
金色の枝の「金枝梅」や、1本で紅白を咲き分ける「想いのまま」、呉服枝重、白牡丹、盤上の梅、
樹齢100年以上の老木など珍しいものもある
「冬至梅」は、極早咲で12月末から咲き始める
寒紅梅、丹紅、道知辺などが早咲きで、見頃は2月中旬より3月中旬
遅咲のものは、3月下旬で、山桜と一緒に咲く
<北野天満宮(上京区)>
約50種類2,000本以上の梅苑 2月25日には梅花祭が行われる
<京都御苑(上京区)>
蛤御門の南の梅林 白梅・紅梅など約20種250本ほど
<京都府立植物園(左京区)>
梅林が園内に2ヵ所あり、紅白の約60品種、150本の梅の木がある
12月中旬頃から3月下旬まで咲き続ける名所
<しょうざん光悦芸術村(北区)>
しょうざん庭園に、100本ほどの梅林、
池や小川があり、北山台杉・紅葉・紀州青石があり、その中に茶室や屋敷が点在している
<常寂光寺(右京区)>
大小40の盆梅が陳列される
<渉成園(枳殻邸)(下京区)(国の名勝)
<城南宮(伏見区)>
源氏物語にも描かれた春の山の枝垂れ梅が150本ほどある
<神蔵寺>
本堂の背後、西にある霊山 朝日山に、梅林園、ふれあいの谷川、遊歩道などが整備されている
<隨心院(山科区)>
うす紅色のふっくらとした「はねずの梅」、八重の梅など200本ほど
<宝が池公園(左京区)>
200本ほど
<天龍寺(右京区)>
白梅、紅梅、枝垂れ梅
<長岡天満宮(長岡京市)>
梅林 梅花祭
<二条城(中京区)>
130本ほど 1本の木に紅白の花を咲かせる「源平咲分け」、枝垂れ梅、白梅、紅梅
<東山浄苑東本願寺>
松や杉、檜などの常緑樹の中に、1,000本の白梅・紅梅、ヤマザクラ、シダレザクラ、藤、山吹、ツツジなどの花が四季折々に咲く
花山法皇が、東の麓から六條山を仰いで「花山」と愛でられた
<福應寺>
梅林園がある
<松風天満宮(東山区)>
<曼殊院(左京区)>
白梅・紅梅など約20本ほど
<龍安寺(右京区)>
約80本ほど
<梅宮大社>
金色の枝の「金枝梅」や、1本で紅白を咲き分ける「想いのまま」、呉服枝重、白牡丹、盤上の梅、
樹齢100年以上の老木など珍しい梅の木もある
<永観堂>
悲田梅(ひでんばい)
永観律師が待ちわびて、貧しい病人に梅の木の実を施したといわれる梅の樹
かつては梅林ほどあったといわれるが、現在は、一本だけになり、小さな実をつける
<大豊神社>
樹齢250〜300年の洛中一大きいといわれる枝垂れ梅
<勧修寺(山科区)>
親子孫三代の木が支え合う「臥竜(がりゅう)の老梅」
<宮 春日神社>
樹齢300年といわれる紅梅
金福寺>
紅梅
<下鴨神社>
「光琳の梅」
普通の紅梅よりも濃い紅色で、非常に甘い香が漂う
尾形光琳の「紅白梅図屏風」のモデルといわれる
<城南宮>
珍しい枝垂れ梅
神苑にある
<誠心院>
梅の木
和泉式部が、生前に愛木した「軒端の梅(のきばのうめ)」にちなんで、後に植えられたもの
<松花堂庭園>
茶室「梅隠」
葦入枝折戸垣に囲まれており、春には白梅、紅梅が咲く
<鳥羽天皇安楽寿院陵>
碁盤の梅
当時、僧侶たちが碁ばかりして修行を怠ったため、境内での碁を禁止して、碁盤を埋めその上に梅の木を植えて戒めたといわれる
現在の梅は、数代目の子孫の梅の木
<錦天満宮(中京区)>
数個の盆梅
<悲田院>
梅の木
<桃山天満宮>
梅の木
<林光院>
「鶯宿梅(おうしゅくばい)(軒の紅梅)」
花には36枚もの花弁があり、つぼみの間は真紅で、開花と共に淡紅に変わり、最後に純白に変わっていく
御所清涼殿前の梅の木が枯れ名梅が探された村上天皇と、紀貫之の娘のゆかりの名木
歌にもよく詠まれている
<尾形光琳>
「紅白梅図屏風(こうはくばいずびょうぶ)」(白梅図)二曲一双屏風(国宝)
白梅の樹幹の大部分を画面外に隠して、紅梅は画面いっぱいに描いて左右に対照の妙をみせる
花弁を線描きしない梅花の描き方や蕾の配列、樹幹のたらし込みは、「光琳梅」と称される
MOA美術館の所蔵
<浄土院>
養林庵書院(重要文化財)襖絵「籬に梅図(まがきにうめず)」
竹垣の上に梅の木が枝を張るという大胆な構図の襖絵
狩野山雪の筆
床の間の「梅に鶯」
狩野山楽の筆
<大覚寺>
宸殿の襖絵「紅白梅図」(重要文化財)
狩野山楽の筆
<天球院>
上間二の間の金碧画「梅花遊禽図」18面
垂直方向の二本の檜、水平方向に延びる地面、枝を張る梅の古木が全体に、枝上部には金雲がかかっている
いたるところに、雉・鳩・真鴨が描かれている
S字に湾曲した梅の大木が画面全体に描かれ、右端の岩上に雉が佇む、狩野山楽の幾何学的な構図になっている
<東本願寺>
御影堂御厨子の「紅梅蓮華図」
幸野楳嶺の筆
<妙顕寺>
「寿老松竹梅図」三幅対>
尾形光琳の筆
下鴨神社の「光琳の梅」がモデルといわれる
<林光院>
掛軸「鶯宿梅(おうしゅくばい)」
扇面に鶯宿梅を描き、梅の花をつんで糸で縫い付けた掛軸
富岡鉄斎の作
<宮本武蔵>
水墨画「紅梅鳩図」(重要文化財)
<花かんざし>
舞妓さんの髪飾りには、毎月決まった花かんざしを挿すしきたりがある
2月の梅の花のかんざしが挿される
<芳春院>
梅花石
前田家の家紋の梅が鮮やかに浮かび上がる
<珠数・念珠玉>
菩提樹の木の実・梅の木、紫檀、黒檀、鉄刀木、栴檀、桑、檳榔樹 などが用いられる
<源氏物語43帖「紅梅 (こうばい)」>
薫の24歳の物語
<菅原道真>
「東風(こち)吹かば 匂い起こせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」(拾遺和歌集)
白梅をこよなく愛した菅原道真が、大宰府に左遷されるときに、自宅で彼の愛した庭の紅梅に別れを惜しんで詠んだといわれる
その梅の木は、後に大宰府まで飛んで行ったという「飛梅伝説」がある
<梅宮大社>
「よそ目にも その神垣とみゆるまで うえばや梅を千本八千本」
本居宣長(もとおりのりなが)が梅を献木して詠んだ
<林光院「鶯宿梅(おうしゅくばい)(軒の紅梅)」>
「勅なればいともかしこし鶯の 宿はととはばいかがこたえん」(拾遺和歌集)
紀貫之の娘が、村上天皇の勅命により、屋敷から御所に移植された梅の木を詠んだ歌
村上天皇は、娘が別れを惜しんだ歌が書かれた短冊を見て、その詩情を憐れみ、この梅をもとの庭に返されたといわれる
鶯宿梅を詠まれた歌
「うぐいすの 春待ち宿の梅がえを おくるこころは 花にぞ有る哉」(島津家久)
「わが宿にうえんも梅のみにあわぬ 名高き花の根さしおもえば」(長淵籐五郎)
煎茶道の師匠 売茶翁 高遊外
林光院に寄寓していたとき、鶯宿梅の梅の実を梅干にして愛蔵し、雅客文人に贈ったといわれる
<万葉集>
元号「令和」の出典
「万葉集 巻五 梅花の歌三十二首并せて序」の
「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」
内閣総理大臣 安倍晋三の記者会見では、
「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ。梅の花のように、日本人が明日への希望を咲かせる」
という思いを込めたものであると語られる
大宰帥 大伴旅人の屋敷の梅園で、山上憶良や下僚ら約30人が集まり「梅花の宴」が催され、32首が詠まれている
青梅には、リンゴよりもカリウムが約2倍、鉄分は約6倍、ビタミンEは30倍ほど含まれている
食欲増進効果・疲労回復効果・血流改善効果・殺菌除菌効果がある
<白干し梅>
梅を塩漬けした梅干し
平安時代頃から作られ始めた
最古の医学書「医心方」によると、薬として用いられていた
室町時代や戦国時代には、武士たちの士気や食欲の増強に重用されていた
<赤梅干し>
梅と 紫蘇(しそ)を一緒に漬けたもの
風味が良くなり、殺菌効果が向上するといわれる
江戸時代から作られ始めた
<木酢(きず)・生酢(きず)>
梅干を漬けるとき、塩漬けにした青梅から最初に出てくる酸味の強い薄茶色の溜まり水
それを集めてビンに入れておき、腹痛のときや、食あたりや水あたりの予防で旅行に出かける前に飲む
二日酔いにも効果があるといわれる
<皇服茶>
正月元日から3日間、六波羅蜜寺において振舞われる梅干しと昆布を入れたお茶
空也上人と村上天皇の故事に由来する
<大福梅>
新年の招福息災の祈りを込める祝膳に欠かせない縁起物
元旦の初茶に入れて飲めば、1年間を無病息災で過ごせるといわれる
村上天皇が病気退散の故事に由来する
北野天満宮において、12月13日の事始めから、12月25日の天神さんの頃まで授与される
<青谷梅林>
50軒あまりの農家により栽培され、栽培面積(約20万m2)、生産量(約120〜130トン)とも京都府で最大を誇る梅園
主な品種は、城州白(梅菓子・梅干用等)、白加賀(梅酒用)、オタフク、ダルマ(小梅)、青軸、鶯宿、玉英など
大別して大梅と小梅に分けられ
大梅は、梅の実「城州白」や、城陽特産の梅酒、和菓子の原料になる
小梅は、歯ごたえのある味が好まれ梅干し用になる
梅干用の梅は、収穫後に塩漬けされ、8月上旬のもっとも暑い時期に、三日三晩、天日干しされ、城陽の夏の風物詩にもなっている
<梅まつり 青谷梅林>
2月上旬〜3月中旬
主催:青谷梅林振興協議会
梅林の梅を使った梅干しや梅ご飯などの販売など
<梅花祭>
2月25日
北野天満宮の祭神である菅原道真の祥月命日に行われる
菅原道真が、梅の花を愛でたことにちなむ
梅花祭神事や、上七軒の芸子・舞妓さんらによる野点などが行われる
<はねず踊り>
3月最終日曜
隨心院のはねず(薄紅色)の梅が咲くころに行われる小野小町を偲ぶイベント
前庭の梅林で、はねず衣装の小野小町と深草少将に扮した少女達が踊りを披露する
<祇園祭>
7月12日から17日
保昌山
丹後守平井保昌(たんごのかみひらいやすまさ)と和泉式部の恋物語
平井保昌は、和泉式部のために御所の紫宸殿から苦労して一枝を手折ったが見つかり矢を放たれ、
ようやく紅梅を持ち帰って恋を実らせたという
紅梅を手折ってくる保昌の人形が載っている
油天神山
真木の松の他に、紅梅の枝を立てて鈴が付けられている
函谷鉾
屋根裏 軒裏の金地の三角形の妻板の前に施されている彫刻
木彫極彩色の中国北宋の詩人 林和靖(りんなせい)が唐団扇を持ち、童子が梅の木の下で白鶴に餌を与える図
油天神山
胴懸「紅白梅」
4本の梅の木に紅色と白色の梅が咲いている
原画は、前田青邨の筆
<歳寒三友(さいかんさんゆう)>
冬の寒さにも耐えて松と竹は緑を保ち、梅は花を咲かせるので、慶事・おめでたいものの象徴とされる
松竹梅を3つ揃えて、祝い事の飾りや、立花などに用いられる
<三等級>
食事や品物や席などを3つの等級に分けたとき、松・竹・梅の順番で称される
<清酒「松竹梅(しょうちくばい)」>
伏見の蔵元 宝酒造株式会社の日本酒
1920年(皇紀2580)大正9年「つねに人々のよろこびの酒でありたい」との願いを込めて命名される
<地歌筝曲「松竹梅(しょうちくばい)」>
三役物で、三味線手事の最高の曲といわれる
歌詞には、松に鶴、竹に月、梅に鶯の縁起物があしらわれた慶賀吉祥の曲
三橋勾当(みつはしこうとう)の作曲
北野天満宮の祭神 菅原道真が梅をとても愛でていたことから、
全国のほとんどの天満宮・天神さんには梅の木が植栽されている
<飛梅伝説>
道真が左遷されるとき、自宅で愛した庭の紅梅に別れを惜しんで歌を詠んだといわれる
「東風(こち)吹かば 匂い起こせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」(拾遺和歌集)
その梅の木が、後に大宰府まで飛んで行ったといわれ、安楽寺(大宰府天満宮)にある